Cover Illustration―――表紙の絵について(2)―――  
 
ロッソ・フィオレンティーノ 《奏楽天使》
ロッソ・フィオレンティーノ
(1494-1540)
Rosso Fiorentino

『奏楽天使』
(1520年制作)
Angilec Musician



2番目に表紙に掲げた絵は、ロッソ・フィオレンティーノの『奏楽天使』でした。フィオレンティーノは、フィレンツェ生まれのイタリア人画家で、時代的にはルネサンスとバロックに挟まれた、美術史の中では「マニエリスム」と呼ばれる時代の、初期の代表的な画家のひとりです。

マニエリスムという用語は、イタリア語で「様式」を意味する「マニエラ」に由来しています。1520年頃からヨーロッパ、特にイタリアで発展した美術様式で、人体を細長く誇張したポーズ、しばしば劇的効果をあたえる非現実的な空間処理、不調和でとげとげしい色彩の選択などに特徴があると言われています。

ロッソ・フィオレンティーノの代表作は、1521年に制作された『十字架降下』だと言われています。切り子面のように幾何学的に造形された人物像、奇妙な遠近法、はげしい色彩、粗暴な光の表現などによって、見る者を不安にさせるような効果を生みだした、マニエリスムの特徴を顕著に表した画風だと言えるでしょう。

『奏楽天使』は、『十字架降臨』の前年の1520年に制作されたものですが、画風から言うと、ダ・ビンチやラファエロの作品を思わせるような、穏やかさや優しさを感じさせる、彼の絵の中でも特異な作品ではないでしょうか。2枚の絵を並べてみると、とても同じ作者の手になるものとは思えないほどです。

多くの画家が色々な天使の絵を描いていますが、フィオレンティーノの『奏楽天使』は、リュートを抱えているというよりは、抱えられているような、はたまた埋もれているような愛らしさ、くるくるとうずを巻く金色の巻き毛、少し眠そうな、見ようによっては自分の奏でる音楽に浸りきって陶酔しているような表情などがとても魅力的で、はじめて見たときからとても惹かれてしまいました。いつか、イタリアのウフィッツィ美術館にある実物を見てみたいと思っています。

ところで、話は変わりますが、イタリアにはチェンナットイオ社から「ロッソ・フィオレンティーナ」というワインが出ています。イタリア語で「ロッソ」は「赤」の意味なので赤ワインなのですが、名前にちなんだのか、ラベルにはロッソ・フィオレンティーノの『奏楽天使』の絵が描かれていたりします。

(2001/11/01)

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