Cover Illustration―――表紙の絵について(1)―――  
 
ピーテル・デ・リング 《楽器のある静物》
ピーテル・デ・リング
(c.1615-1660)
Pieter de Ring

『楽器のある静物』
(制作年不明)
Still-Life of Musical Instruments



サイトのトップ画像として一番最初に使用していたのが、バロック期のオランダの画家である、ピーテル・デ・リングが描いた『楽器のある静物』です。

実は、古いモノクロ写真のような、全体にセピアがかった色調がとても気に入って、サイトのトップに掲げたものの、友人からもらった素材集に入っていた画像を使用したため、絵の作者も作品名も、長い間わからないままでいました。けれど、最近ネットサーフィン中にWeb Gallery of Artで、作者と作品名を知ることができました。

ピーテル・デ・リングは、、オランダのライデン Leiden で生まれ、同地で亡くなった画家・彫刻家です。作品に残されたサインなどから、絵を描き始めたのは1647年頃からだろうと考えられていて、それ以前は彫刻を主として行っていたようです。

リングの静物画は、同時代のオランダの有名な静物画家の一人であった、ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム Jan Davidsz. de Heem (1606-83/84)のスタイルを踏襲したものだったと言います。デ・ヘームは『ガラス器に生けられた花と果物』などのような、豪華な花や果物の静物画で知られています。そのためか、リングの静物画でも花を題材としたものは、デ・ヘームの作品と見分けがつかないほどに似たものが多いと言われています。

ところで、果物、花、食器類、本、楽器など、自らは動かないものを構成して描く静物画は、バロック時代になってはじめて、独立したジャンルとして成立しました。特に、ネーデルラント(フランドル・オランダ)で発達し、花束や果物、猟の獲物などをのせた食卓を画題にして、華麗な質感描出と丹念な細部描写をほどこされた静物画が描かれました。

バロック期ネーデルラントにおける静物画は、静物という主題自体を重視したのではなく、むしろ、バロックの理念のひとつである写実の精神の具現を、身近にある題材で行うことによって、画家自身の腕前を示すために描かれたものだとする説が主流のようですが、同時に、画面に描かれたひとつひとつのものに、なんらかの象徴的な意味を付した、寓意画として描かれたもではないかとする説も有力なようです。

もし、寓意画として見るならば、リングの『楽器のある静物』の主題は、さしずめ《はかなさ》と言ったところでしょうか。楽器から流れ出る音は時間とともに消え去り、中央に置かれた本の挿絵で男が吹いているシャボン玉は、生まれては直ぐに消えてゆくものですから。

(2002/09/21)
 

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