Early Music Art Gallery  ―――チェンバロ(44)―――


フランソワ=ユベール・ドルーエ『ファヴァール夫人の肖像』
フランソワ=ユベール・ドルーエ
Francois-Hubert Drouais
(1727-1775)

『ファヴァール夫人の肖像』
Madame Charles Simon Favart

1757年制作

ニューヨーク,メトロポリタン美術館
Metropolitan Museum of Art, New York



シャルル・シモン・ファヴァール夫人 (1727-72)、旧姓マリー・ジュスティーヌ・ブノワット・デュロンスレ Marie Justine Benoite Duronceray は、18世紀のフランスのオペラ・コミック界において第一級の歌手、女優でした。1745年にフランスのコミック・オペラの父と言われる劇作家シャルル・シモン・ファヴァールと結婚後も女優業を続け、なおかつ、彼女自身もオペラ・コミックの劇作家、演出家としての才能を示した才女です。

ここで取り上げたクラヴサンを引く肖像画は、ファヴァール夫人が30歳の時に描かれたものですが、画家はその美しさとともに、聖セシリアを思わせるようなポーズを彼女に取らせ事で、いかに音楽の神に愛された存在だったかを示したかったように思われます。

ただし、この絵がファヴァール夫人の本質をあらわしているかと言われると、ちょっと疑問ではあります。その活動から考えても、ファヴァール夫人はかなり活動的でアイディアに富んだ、ある意味びっくり箱のような人物だったと考えるのが、妥当であるような気がします。

この絵を描いたフランソワ=ユベール・ドルーエは、ロココ後期から新古典前期にかけて活躍した肖像画家です。フランソワ・ブーシェ Francois Boucher (1703-1770) のもとで学び、そのスタイルを模倣することで成功した画家でした。肖像画家としては同門のジャン=マルク・ナティエ Jean-Marc Nattier (1685-1766) とライバル関係にあったようです。

ドルーエの肖像画は、子供の肖像画などに特に顕著ですが、陶器のようなつややかな肌とつぶらな目という、人形のように美しい人物表現を特徴としています。ファヴァール夫人の肖像画にも、充分にその特徴が出ていると言えるでしょう。

(2007/12/26)

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